私はこのレースこそ、スティーブ・コーゼンのベスト騎乗だと思います。
コーゼンの名騎乗、特に馬群捌きの凄さで有名なのは、先の記事でも取り上げた1983年のDubai Champion Stakesだと思いますが、この記事で取り上げるレースの馬群捌きはその上をいくと思います。
距離は1m1f(約1800m)、ニューマーケット競馬場で行われた直線のみの伝統のレース。
40頭が出走している、戦争みたいなレースです。
コーゼンはこのレースで道中39番手を進み、全頭をなで斬りにしました。
残り600m付近から追い出して前の十数頭を捌いてゴボウ抜きにしたところも凄いですが、このレースの白眉は残り200m付近での一瞬の進路変更の場面だと思います。
この進路変更は神業だと思います。
コーゼン騎乗のRisen Moonは、ラチ沿いにいる白帽・緑の勝負服。
よく見ると、ラチ沿い最後方のコーゼンの白帽が、ラチ沿いから馬群中央までヒューーンと飛ぶように動いているのが分かります。
その後、前の馬群を捌いて、あっという間に先団に接近。
その後、前を行く青い勝負服の馬(馬群から抜け出したあと左から右にヨレてフラフラしている馬)の直後で、自らの馬の進行方向を右側から左側にノーブレーキ、ワンアクションで変更しています。
追い出しから最後のひと捌きまでの間、ノーブレーキ、軸ブレゼロです。
というより、残り600m地点からの仕掛けからゴールまで一度も手綱を引いたりブレーキをかけたりしていません。
あまり知られていないレースかもしれませんが、最後方から前の数十頭を捌いて進出したところを含めて、世界の競馬史に残る馬群捌きだと思います。
もし興味を持たれたら、最後の進路変更の箇所は動画の再生速度を一番遅くしてコマ送りでご覧になっていただきたいです。