先のエントリーで、コーゼンの騎乗はとにかく「丁寧」で「繊細」、それでいて「大胆」、本当の意味で「正確」な騎乗だと書きました。
その観点から言うと、ディミニュエンド (Diminuendo) で勝利した2つのオークス (1988) も素晴らしい。1988年のイギリスオークス (12f, 約2400m, エプソム競馬場) の最後の直線でも、本当に丁寧に馬を動かしています。イギリスオークスを含めてGⅠを3勝することになるディミニュエンド (Diminuendo) に騎乗して圧勝したレースです。このイギリスオークスでの最後の直線、馬群の大外から一気にラチ沿いに切れ込んでいくのですが、その切れ込み方、進路の取り方が、あまりに鮮やかで全く無駄が無いのです。最後の直線を向いてから、外から内へ一頭いっとう、内側の馬の横にピタっと付ける→内側の馬が下がる→瞬時に内側の馬の前を横切り、その内にいる馬のよこにピタっと付ける・・・を繰り返して内ラチ沿いに進出。圧勝するだけの脚がある馬で、不利なく内側に移動するなどトップジョッキーにとっては当たり前の技術と言われればそれまでなのですが、コーゼンは本当に他馬に一切の不利を与えずに、隣の馬より前に出た瞬間、進路ができた瞬間にスッと横に動くのです。馬の姿勢も、コーゼンの姿勢も全く乱れることがありません。ここまで時間的・空間的な無駄がなく馬の進路変更を行える騎手は、本当に稀だと思います。
◆1988年 イギリスオークス
イギリスオークス後に出走したアイルランドオークス (12f, 約2400m, カラ競馬場)でも、外から内側に切り込む際に、接触スレスレのところで隣の馬の前に出ている。そして内から進路を主張する馬の邪魔をしないまま先頭に接近。そして本格的に追い出し開始。追い出し開始時は長手綱、最後の追い比べでは短い手綱と、手綱の長さを自在に変えて追っている。その切り替えも鮮やかです。最後はなんと1着同着。
◆1988年 アイルランドオークス
最後に、1992年10月4日、引退直前のコーゼンによる、
◆1992年 ロンポワン賞(最終コーナー~最後の直線のみの映像)
ブッちぎりの圧勝ですが、ここでも「粗さ」が一切ない進路確保、
1976年にアメリカでデビューしてから16年後の1992年、32歳でスティーブ・
※追記 (1991 Newgate Stud Middle Park Stakes)
2着のレースですが、コーゼンの馬群捌きの技術が見られるレースをご紹介します。
1991年の Newgate Stud Middle Park Stakes です。コ―ゼンはシェイク・モハメドの勝負服の馬 Lion cavern に乗っています。残り200mから追い出すのですが、ラチ沿いから4頭分、馬群の外側へ一気に追いながら移動しています。この間、一度もブレーキを踏まず、「ピタッ」と移動後に止まったときも手綱を動かし続け、そのまま最後まで追っています。馬の顔や首も進路変更時に上がったりすることもありません。サラッとやっていますが、これほど見事な進路変更を行える騎手は殆ど存在しないでしょう。
何度も書いていますが、道中であれ最後の追い合いであれ、コーゼンが馬群を捌くときは時間的・空間的な無駄がありません。余計に動きすぎて他馬に不利を与えることもない。このレースでも余分に外に出すようなことは一切せず、先頭の馬の右側一頭分のところでピタッと止まる。しかもその際に、馬の顔や首が全く動きません。それでいて追いっぱなしで全力疾走させ続けています。極めて高度な技術です。こういう捌きができるからこそ、40頭立て最後方から馬群を捌いて勝つような神業の如き騎乗ができるのです。